労働基準監督署長の処分に対する審査請求

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労災の不支給決定に対する不服(審査請求)

労働基準監督署長の行った処分について、不服があるときには、次のとおり審査請求ができます。

順序としては、まず①の審査請求を行います。そして、①の決定処分に対して不服がある場合は、さらに、②の再審査請求をすることができます。

労働者災害補償保険法 第38条1項
保険給付に関する決定に不服のある者は、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服のある者は、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができる。

審査請求フローチャート

裁判所に対する取消訴訟(不服申立)

行政庁の処分に対して、不服がある場合、さらに、裁判所に対して行政訴訟(取消訴訟)を提起することができます。

もっとも、原則として、取消訴訟はいきなり提起することができず、再審査請求に対する労働保険審査会の裁決を経た後でなければ、提起することができないと規定されています。

いわゆる不服申立前置という制度です。

労災に関する処分は専門性が高いことから、一次的には専門機関である行政庁の判断を経るべきであるとの考えからこのような規定が制定されています。

労働者災害補償保険法 第40条  
第38条第1項に規定する処分の取消しの訴えは、当該処分についての再審査請求に対する労働保険審査会の裁決を経た後でなければ、提起することができない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 再審査請求がされた日から三箇月を経過しても裁決がないとき。
二 再審査請求についての裁決を経ることにより生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるときその他その裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。

取消訴訟として考えられる類型

労災保険給付を支給しないとする処分の取消を求めるもの

争う方法としては、取消訴訟を提起します。

別途、処分を求める義務付け訴訟を提起するか否かも検討の余地があると思います。

しかし,「行政庁は判決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分をしなければならない」(行政事件訴訟法33条2項)との規定があることから、取消訴訟が請求認容判決となれば,支給決定が受けられることも期待できます。

具体的な事案としては、過労死、過労自殺などが考えられます。このような場合、過重な業務に従事したことに起因して発病等が生じたのか否かが争いになるケースが多いと思われます。

障害等級の認定を争うもの

例えば、後遺障害は少なくとも障害等級12級に該当するのに14級と認定したのは違法であると主張して、その取消しを求めるようなケースが考えられます。

この場合の争い方としては、例えば、14級と認定した処分の取消訴訟と提起するとともに、障害等級12級と認定することを求める義務付け訴訟を併合提起することができます。

審査請求書(不服申立)の書き方は?

ご自身で審査請求をする場合、どのような記載をすればよいのか分からないことが多いと思われます。

この点ですが、労災認定に関する審査請求の事件は、数が多いとまではいえず、弁護士であってもやはり、根拠条文や参考書式等に依拠して文書を作成します。

ちなみに、行政不服審査法15条1項では、審査請求書の記載事項を規定しています。当該規定に基づき記載をしていけば、書類の概略は出来上がると思います。

しかしながら、重要なのは審査請求の理由です。これについては、労働基準監督署長の認定がなぜ違法であるのかにつき、証拠などに基づき主張する必要があります。

行政不服審査法 第15条(審査請求書の記載事項)
審査請求書には、次の各号に掲げる事項を記載しなければならない。