交通事故の損害賠償請求と損益相殺|(大阪市東住吉区)片岸法律事務所

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損益相殺について

損益相殺とは、交通事故の被害者等が、交通事故を起因として利益を得た場合に、損害額から既に受けた利益を控除することをいいます。

被害者が損害以上に利得(二重の利得)を受けないようにする考えです。

損益相殺の対象となるもの

被保険者は保険者から支払を受けた保険金の限度で右損害賠償請求権を喪失するものと解するのが相当であるとの判例があります。

遺族年金(支給を受けることが確定した額を限度)

支給を受けることが確定した遺族年金の額の限度で、(中略)損害額からこれを控除すべきものであるが、いまだ支給を受けることが確定していない遺族年金の額についてまで損害額から控除することを要しない (H5.3.24 最高裁)。

自賠責保険を受領した際の充当の方法

最高裁判所の判断によれば、まず遅延損害金に充当すべきとした。

本件事故時から本件自賠責保険金等の支払日までの間の遅延損害金が既に発生していたのであるから、本件自賠責保険金等が支払時における損害金の元本及び遅延損害金の全部を消滅させるに足りないときは、遅延損害金の支払債務にまず充当されるべきものであることは明らかである(民法491条1項参照)(最高裁H16.12.20判決)

労災保険法に基づく各種保険給付などの充当の方法

自賠責保険の判断とは異なり、各種社会給付については不法行為の時にてん補されたものとすると判断した。

てん補の対象となる損害は不法行為の時にてん補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが、公平の見地からみて相当というべきである (最高裁H22.9.13判決 )。

損益相殺の対象とならないもの

本件条項に基づく死亡保険金を右被保険者の相続人である上告人らの損害額から控除することはできないというべきである(H7.1.30 最高裁)

もっとも、搭乗者傷害保険金を受領したことにより、精神的苦痛が若干慰謝されると考えられます。そのため、慰謝料請求の際には、加害者側に有利な事情として参酌される可能性があります。

すでに払い込んだ保険料の対価の性質を有し、もともと不法行為の原因と関係なく支払わるべきものであるから、(中略)これを不法行為による損害賠償額から控除すべきいわれはない(S39.9.25最高裁)。