少年院送致を回避するには?|家庭裁判所が重視するポイント

「初めての少年審判なら、少年院に行くことはないのでしょうか。」

お子さんの審判を控え、この点を心配される保護者の方もいらっしゃると思います。

最初にお伝えしたいこと

初めての少年審判でも、少年院に送致される場合はあります。

逆に、過去に少年審判を受けたことがある場合であっても、保護観察となるケースもあります。
もっとも、二回目の審判となれば、裁判所の判断は厳しくなる可能性が高いです。

家庭裁判所は、非行の内容だけでなく、これまでにどのような指導を受けたか、なぜ非行を繰り返したのか、家庭に戻って更生できるのかなどを検討します。

この記事では、当職の弁護・付添人活動の経験を交えながら、少年院送致の判断に関わる主な事情と、審判に向けて保護者ができる準備について説明します。

※主に非行事実に争いのない事件を想定した説明です。18歳・19歳の「特定少年」には処分などに特則があり、年齢や事件の内容に応じた検討が必要です。

目次

初めての少年審判でも少年院送致になるのはなぜ?

少年審判では、非行の重さに加え、少年が再び非行に及ぶおそれや、その改善のために必要な教育・支援が検討されます。

「初回だから保護観察」「2回目だから少年院」というように、審判の回数だけで処分が決まるわけではありません。

初めての審判の場合

非行が重大である場合や、生活環境・行動上の問題が大きく、社会内での更生が難しいと判断される場合などには、少年院送致が検討されます。

過去にも審判を受けている場合

これまでの指導が生かされなかった理由が問われます。その原因に向き合い、実効性のある支援や監督の体制を整えることが重要です。

なお、審判の結論は保護観察と少年院送致の二つだけではありません。不処分や児童自立支援施設等への送致などがあり、事件によっては検察官送致が問題となることもあります。

少年院送致の判断で考慮される主な事情

審判に向けて確認・準備したい主な事項は、次のとおりです。それぞれの事情を個別に見るだけでなく、関連付けて検討する必要があります。

主な判断要素具体的に確認すること
① 非行の内容・役割被害の大きさ、危険性、計画性、集団の中で果たした役割
② 非行歴・指導歴過去の審判や保護観察の有無、指導が生かされなかった理由
③ 家庭の監護体制誰が、いつ、どのように少年の生活を見守るか
④ 学校・仕事復学や就労の見通し、教師や雇用主などとの連携
⑤ 被害者への対応謝罪・被害弁償・示談の状況と、その過程での取組み
⑥ 反省・更生への意欲非行の原因と被害への理解、再非行を防ぐ具体策

1.非行の内容と少年が果たした役割

非行の内容は、重要な判断要素です。生じた結果が重大か、行為にどの程度の危険性があったか、計画的な行為だったかなどが検討されます。

複数人による事件では、少年が自ら計画して仲間を誘ったのか、先輩などに誘われて加わったのかといった役割も問題になります。

ただし、誘われた立場であれば責任が軽くなると決めつけることはできません。集団の中で、少年が実際にどのような行為をしたのかを確認する必要があります。

2.非行歴と、これまでに受けた指導

過去に少年審判を受けたことがあるか、保護観察中の再非行かという点は、大きな考慮要素になります。

保護観察が終了した後であっても、それまでの指導内容や終了後の生活状況が検討されます。

「保護観察期間が終わっていたから問題ない」という形式的な判断にはなりません。何を学び、何が改善できずに残っていたのかを振り返ることが必要です。

■ 弁護士の実務コラム

「初めての審判」でも、反省の機会が初めてとは限りません

当職が少年事件に関わる中で、注意が必要だと感じるのは、次のような経過をたどるケースです。

  1. 非行Aについて、警察の捜査を受ける
  2. 逮捕されず、在宅で家庭裁判所の調査を受ける
  3. 審判を待つ間に、別の非行Bに及ぶ
  4. 非行Bで逮捕・勾留され、その後、観護措置により少年鑑別所に収容される

これから受ける審判が初めてであっても、すでに警察や家庭裁判所との関わりを通じて、自分の行動を振り返る機会があったケースです。

私は、こうした場合に「初めてだから大丈夫」と安易には考えません。

なぜ、その機会(非行A)を次の行動につなげられなかったのか。

友人からの誘いを断れなかったのか。問題を一人で抱え込んでいたのか。生活の中に、非行に戻りやすい状況が残っていたのか。そこを少年本人と一緒に掘り下げる必要があると考えています。

責める言葉を重ねるだけでは、次の非行を防ぐ方法は見えてきません。
具体的な場面まで振り返り、次はどうするかを考えていきます。

3.家庭で指導・監督できる体制があるか

家庭に戻った後、同居する家族が少年の生活を把握し、必要な指導や支援を行えるかも重要です。

例えば、保護者が仕事で不在にする時間が長い場合には、勤務時間の調整、親族の協力、学校や支援機関との連携などを検討します。

仕事で留守になること自体で結論が決まるのではなく、少年に必要な見守りを、現実に続けられる形で用意できるかが問題です。

「今後は厳しく見ます」を、具体的な計画に

  • 帰宅時間や外出先を、誰がどのように確認するか
  • 家族が不在の時間帯を、どこでどのように過ごすか
  • 約束を守れなかったとき、誰に相談し、どう対応するか

4.学校・就労先など、社会に戻った後の生活

通う学校があるか、復学できるか、教師と連携できるかといった点を確認します。働いている少年であれば、就労を続けられるか、必要な支援をしてくれる雇用主などがいるかも検討します。

単に「学校に行く」「働く」と書くだけでなく、通学・勤務の予定や、困ったときの相談先まで整理しておくことが大切です。

学校や勤務先への情報共有は、少年のプライバシーにも配慮し、支援に必要な範囲を検討します。

5.被害者への謝罪・被害弁償・示談

示談の成立は考慮される事情の一つです。示談が成立していない場合にも、謝罪や被害弁償を申し出るなど、どのような対応を重ねたかが問題になります。少年本人の受け止めとともに、保護者の取組みも確認します。

ただし、示談が成立し、被害者から許す意思が示されたとしても、少年院送致を回避できるとは限りません。

成人事件では「示談(被害者の宥恕)があったか否か」が、大きく重視される傾向にあります。
しかし少年事件では、示談の有無より、少年の更生にどのような処遇が必要かという視点で判断されています。

関連記事:少年事件で示談しても釈放されない?|成人事件との違いと付添人活動

6.反省が、具体的な行動につながっているか

少年の反省と更生への意欲

少年がどこまで自らの非行を反省し、更生しようとする意欲を持っているかという点も、重要な判断要素です。

反省文を作成し、「二度と非行はしません」と述べることは大切です。しかし、それだけで十分とはいえません。

重要なのは、その言葉の先にあるものです。

例えば、被害者のいる事件であれば、被害者がどのような恐怖や苦痛を感じたのか、被害者の家族にどのような影響を与えたのか、深く考える必要があります。

また、示談が成立したからといって、被害者の精神的な苦痛がすべて解消されるわけではありません。事件による心の傷が、その後の生活にどのような影響を及ぼし、どれほど長く残る可能性があるのかについても、想像力を働かせることが大切です。

さらに、非行の背景に問題のある交友関係が存在する場合には、今後その関係をどうするのかという問題があります。

単に「今後は付き合いません」と約束するだけでは不十分です。再び非行に誘われた場合にはどうするのか。相手が親しい友人や先輩であっても、きっぱりと断ることができるのか。具体的な場面を想定して考える必要があります。

このように、少年が向き合わなければならない問題は数多くあります。

大切なのは、反省の言葉を繰り返すことではなく、なぜ非行に及んだのかを自分自身で掘り下げ、同じ過ちを繰り返さないために何を変えるべきか、具体的に考えることです。

付添人である弁護士も、少年との面会を重ねながら、こうした問題について一緒に考え、少年が自らの課題に向き合えるよう働きかけていくことが重要だと考えています。

少年の言葉さらに考えたいこと
「もう付き合いません」また連絡が来たら、どう断るのか。街で会ったらどうするのか。困ったとき、誰に相談するのか。
「二度としません」非行に至ったきっかけは何か。同じ状況になったら、どの場面で行動を変えられるのか。
「被害者に申し訳ないです」被害者や家族の生活にどのような影響が及んだのか。示談が成立しても、どのような苦痛が残り得るのか。

言葉を上手に並べることよりも、本人が自分の問題を理解し、具体的な行動を考えられていることが大切です。

関連記事:少年鑑別所での面会【中期編】|反省を深め、変わり始める少年と付添人の役割

2回目の少年審判では、試験観察を検討することも

当職の実務上の印象として、初めての審判なのか、過去にも審判を受けているのかは、見通しを考える上で大きな違いです。

過去の指導を経ても再非行に至った場合には、前回と同じ説明や約束だけでは不十分だと考えています。

そこで、保護者と生活環境の調整を進め、事件によっては試験観察を検討します。

試験観察とは?

家庭裁判所が最終的な処分をいったん保留し、一定期間、家庭裁判所調査官による観察を通じて少年の行動や生活状況などを確かめるものです。その結果などを踏まえ、最終的な処分が決まります。

審判に向けて、保護者と一緒に準備したいこと

初めての審判でも、過去に審判を受けたことがある場合でも、少年の状況に応じた準備を積み重ねることが必要です。

  1. 経緯を整理する
    今回の非行と過去の指導を振り返り、非行に至った原因や、繰り返してしまった理由を考えます。
  2. 生活環境を整える
    家庭での見守り、学校・仕事、交友関係について、実行できる計画を立てます。
  3. 被害者に向き合う
    相手の意向を尊重しながら、謝罪・被害弁償などの対応を検討します。
  4. 本人の理解を深める
    用意した言葉を覚えるのではなく、自分の問題と今後の行動を、自分の言葉で説明できるようにします。

審判直前の準備については、少年鑑別所での面会【審判直前編】|模擬審判で少年の不安を和らげる付添人活動で詳しく紹介しています。

■ 弁護士から、ご家族へ

審判の先にある毎日の生活まで、一緒に考えたいと思っています

初めての審判であれば、保護観察などによって家庭に戻れる可能性を探り、入念に準備を進めます。ただ、処分の結果を約束することはできません。

私が大切にしたいのは、少年が「家に帰りたい」と話した、その先です。

帰った後、毎日をどう過ごすのか。以前の仲間から誘われたらどうするのか。つらいとき、誰に助けを求めるのか。

保護者の方だけで、すべてを抱える必要はありません。本人、ご家族、学校や職場など、それぞれができることを整理し、続けられる環境を考えます。

審判に向けた準備を、少年が自分の行動を見つめ直し、再非行を防ぐための時間にしたい。

そのように考えて、付添人活動に取り組んでいます。

初めての少年審判・少年院送致についてよくある質問

初めての少年審判なら、保護観察で終わりますか?

必ず保護観察になるわけではありません。非行の内容や少年の状況、生活環境などによっては、初めてでも少年院送致となる可能性があります。

少年鑑別所に入ると、そのまま少年院に行くのですか?

少年鑑別所への収容と、少年院送致は別のものです。鑑別所に収容されたことだけで、少年院送致が決まるわけではありません。

収容期間などは、少年鑑別所での収容期間は?をご覧ください。

示談が成立すれば、少年院送致を避けられますか?

示談は考慮されますが、それだけで処分は決まりません。少年の再非行を防ぐために必要な教育や、家庭などでの支援体制も検討されます。

2回目の少年審判でも、家庭に戻れる可能性はありますか?

二度目の保護観察処分を獲得した事例はあります。ただし、直ちに保護観察処分を狙うのでなく、試験観察を経てから最終的に保護観察処分を狙う付添人活動になることが多いと思います。

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