休業損害
休業損害とは、交通事故による怪我のため仕事を休まざるを得ず、事故がなければ得られたはずの収入を得られなかったことによる損害です。
基本的には、1日当たりの基礎収入を算定し、事故によって必要となった休業日数をもとに計算します。
もっとも、基礎収入をどのように算定するかは、給与所得者、自営業者、会社役員、家事従事者などによって異なります。
大阪で交通事故の損害賠償額を検討する場合には、「大阪地裁における交通損害賠償の算定基準」を踏まえて、実際の収入、休業状況、仕事の内容などから個別に検討します。
休業損害の基本的な考え方
基礎収入
事故がなければ得られたと考えられる収入をもとに、1日当たりの収入を検討します。
休業日数
怪我のため実際に仕事を休む必要があった日数を確認します。
現実の減収
給与の減額など、事故によって実際に収入が減少したかを確認します。
休業損害は、単に「通院した日数×日額」で当然に認められるものではありません。怪我の程度、仕事内容、実際の休業状況などを踏まえて検討することになります。
休業損害の計算|自営業者の場合は少し難しい
当事務所で交通事故の休業損害を取り扱う際、自営業者の場合には、保険会社から確定申告書の写しを求められることが多くあります。
以前であれば、税務署の受付印が押された確定申告書の控えを提出することが一般的でした。
しかし、現在は電子申告が広く利用されています。また、令和7年1月以降は、書面で提出した場合についても申告書等の控えへの収受日付印が押されなくなっています。
e-Taxの場合、受信通知等を確認することがあります
e-Taxで申告した場合には、申告書の控えだけでは、いつ税務署へ送信されたものなのか分かりにくい場合があります。
そのため最近の取扱いでは、確定申告書の控えと併せて、e-Taxの受信通知など、受付日時・受付番号等を確認できる資料の提出を保険会社から求められることがあります。
当事務所でも、自営業者の休業損害を請求する場合には、確定申告書だけで足りるのか、受信通知その他の資料まで必要なのか、相手方保険会社と確認しながら対応しています。
自営業者は「前年の数字だけ」で決めにくい場合があります
自営業者の休業損害が難しい理由の一つは、毎月同じ収入があるとは限らないことです。
会社員であれば毎月の給与がおおむね一定であることが多いのに対し、自営業者の場合には、景気、季節、受注状況などによって売上や利益が大きく変動することがあります。
また、確定申告上の所得がそのまま休業損害の基礎収入になるとは限りません。
自営業者では、例えば次のような点を確認します。
- 事故前年の確定申告所得
- 事故前の売上・利益の推移
- 事故後、本当に営業できなかった期間
- 休業しても支払いが続く固定経費があるか
- 季節によって売上が大きく変動する仕事か
- 事故前後の売上や受注状況
例えば、休業しても事務所家賃など一定の固定経費の支払いを続けなければならない場合、その固定経費をどのように扱うかについても検討が必要になります。
当事務所での対応
自営業者の休業損害について、すべての事件で一つの計算方法を機械的に当てはめることはしていません。
依頼者から、事故前の仕事の状況、売上の特徴、実際に休業した期間などをお聞きしたうえで、提出できる資料を確認します。
そのうえで、相手方保険会社がどのような資料や計算方法を求めているのかも確認し、依頼者の意向を踏まえながら柔軟に休業損害を組み立てていくようにしています。
給与所得者の休業損害
給与所得者の場合は、事故前の給与額を基礎として、交通事故による怪我のため休業し、現実に減少した収入を休業損害として請求することが基本となります。
大阪の交通事故実務でも、勤務先が作成する休業損害証明書、事故前の給与明細、源泉徴収票などを資料として確認します。
基礎日額については、事故前3か月の給与を基礎として平均額を算定する方法などが用いられますが、給与体系や休業形態によって計算方法は異なる場合があります。
有給休暇を使用した場合
怪我の治療のため、本来であれば使用する必要のなかった有給休暇を使用した場合には、給与自体が減額されていなくても、有給休暇を失ったことを休業損害として評価できる場合があります。
参考となる計算例
例えば、事故前年の年収が500万円で、休業日数が10日であった場合、単純に年収を365日で日額換算すると、次のような計算になります。
(500万円 ÷ 365日)× 10日 = 約13万6,986円
ただし、これはあくまで簡単な計算例です。実際には、事故前3か月の給与、所定労働日数、給与の減額内容、賞与への影響などを確認して算定します。
自営業者・個人事業主の休業損害
自営業者の場合も、原則として事故前の収入を基礎として休業損害を検討します。
基礎収入を確認する資料としては、事故前年の確定申告書、青色申告決算書又は収支内訳書などが中心となります。
一般的には、売上そのものではなく、売上から必要経費を差し引いた所得を基礎として考えることになります。
もっとも、休業していても支出を免れることのできない固定経費がある場合には、その固定経費を基礎収入に加えて評価することが認められる場合があります。
参考となる計算例
例えば、事故前年の売上が1,000万円、必要経費が400万円で、30日間の休業が認められると仮定した場合、単純化すると次のような計算になります。
{(1,000万円-400万円)÷365日}×30日 = 約49万3,151円
ただし、自営業者の休業損害は、この計算式に必ず当てはめるものではありません。
事業の内容、事故前後の収入状況、固定経費、季節変動、実際の休業状況などを踏まえて個別に検討する必要があります。
会社役員の休業損害
会社役員の場合には、役員報酬の全額が当然に休業損害の基礎となるわけではありません。
役員報酬には、実際に会社で働いたことに対する労務提供の対価としての部分と、会社の利益配当としての性質を持つ部分が含まれることがあります。
大阪の交通事故実務では、休業損害として問題となるのは基本的に労務提供の対価部分です。
もっとも、実際には「役員報酬の何%が労働対価で、何%が利益配当か」が明確に区分されているわけではありません。
会社役員では、固定した割合を機械的に掛けるのではなく、個別事情を確認します。
- 会社の規模
- 従業員数
- 役員本人の具体的な仕事内容
- 役員の職務が会社の売上にどの程度影響しているか
- 他の役員・従業員との報酬額の比較
- 事故によって実際に業務ができなくなった程度
旧ページでは労働対価割合を80%とする計算例を掲載していましたが、この割合が一律に適用されるものではありません。そのため、現在は具体的な事情に応じて検討する必要があると考えています。
専業主婦など家事従事者の休業損害
専業主婦など、家族のために家事を行っている家事従事者についても、交通事故によって家事労働ができなくなった場合には休業損害が認められることがあります。
家事労働は現実の給与収入を生じさせるものではありませんが、金銭的に評価することのできる労働であると考えられています。
大阪の交通事故実務でも、家事従事者の基礎収入については、原則として賃金センサスの女性労働者・学歴計・全年齢平均賃金などを参考にして算定します。
賃金センサスの金額は毎年変わりますので、事故の時期に対応した統計を確認する必要があります。
家事が全くできなかった期間と、その後の期間
例えば入院中で全く家事ができなかった場合と、退院後にある程度家事ができるようになった場合とでは、家事労働への影響は同じではありません。
そのため、治療期間のすべてについて100%の休業損害を認めるのではなく、怪我の回復状況に応じて家事への支障の程度を段階的に評価することがあります。
家事労働も金銭的に評価されます
最高裁判所も、家事労働は財産上の利益を生じるものであり、金銭的に評価することができると判断しています(最高裁昭和49年7月19日判決)。
したがって、「専業主婦だから収入が0円なので休業損害も0円」という扱いにはなりません。
休業損害は職業によって計算方法が異なります
休業損害は、基本的には「基礎収入×休業期間」という考え方で算定しますが、実際の基礎収入の認定方法は職業によって異なります。
| 職業等 | 主に確認する資料・事情 |
|---|---|
| 給与所得者 | 休業損害証明書、給与明細、源泉徴収票、実際の減収 |
| 自営業者 | 確定申告書、青色申告決算書・収支内訳書、固定経費、事故前後の売上・利益 |
| 会社役員 | 役員報酬のうち労務対価部分、仕事内容、会社規模等 |
| 家事従事者 | 賃金センサス、家事内容、怪我による家事への支障の程度 |
同じ年収、同じ休業期間であっても、仕事の内容や収入形態によって休業損害の計算が変わることがあります。
特に自営業者、会社役員、家事従事者については、単純な計算式だけでは金額を決めにくいため、資料と具体的な事情を確認しながら算定する必要があります。
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