認知手続について
認知とは、婚姻関係にない父母の間に生まれた子について、父が自分の子であることを認め、法律上の父子関係を生じさせるための手続です。
認知により、父と子との間に法律上の親子関係が生じ、扶養義務や相続関係などが発生します。認知の効力は、原則として子の出生の時にさかのぼります。
これに対し、母と子との親子関係は、原則として分娩の事実によって当然に発生すると考えられているため、母が改めて子を認知する手続をとる必要はありません。
したがって、婚姻関係にない父母の間に子どもが生まれ、父に対して養育費を請求したり、父の相続人となったりするためには、父による任意認知を受けるか、父が認知に応じない場合には裁判所の手続によって認知を求めることが必要となります。
父が任意に認知する場合
父が認知することに同意している場合には、戸籍法の定めるところにより認知届を提出することで認知することができます。また、遺言によって認知をすることもできます。
父は原則としていつでも認知することができますが、認知される子が成年、すなわち18歳以上の場合には、その子本人の承諾が必要です。
また、死亡した子であっても、その子に直系卑属がいる場合には認知することができます。ただし、その直系卑属が成年者である場合には、その承諾が必要です。
胎児を認知する場合
父は、子どもが出生する前であっても、胎児を認知することができます。この場合には、母の承諾が必要です。
もっとも、胎児認知がされた場合でも、出生時に民法上の嫡出推定によって別の者が父と定められる場合には、その胎児認知は効力を生じません。
父が認知してくれない場合
父が任意に認知をしてくれない場合には、家庭裁判所の手続を利用して認知を求めることができます。
この場合、原則として、まず家庭裁判所に認知調停を申し立てることになります。
認知調停
認知調停では、子が父の子であるかどうかについて、当事者双方の事情を確認しながら手続が進められます。
当事者間で、子が父の子であることについて合意ができた場合でも、その合意だけで認知が成立するわけではありません。家庭裁判所が必要な事実の調査を行い、その合意が正当であると認めた場合に、合意に相当する審判がされます。
父子関係について争いがある場合には、事案に応じてDNA鑑定などが検討されることもあります。
認知の訴え
認知調停を行っても合意が成立しない場合には、家庭裁判所に認知の訴えを提起することができます。
認知の訴えを提起することができるのは、子、その直系卑属またはこれらの者の法定代理人です。
父がすでに死亡している場合にも認知の訴えを提起することはできますが、原則として父の死亡の日から3年以内に提起する必要があります。父が死亡している場合には、検察官を被告として訴えを提起することになります。
内縁関係の解消後に父が認知しない場合
例えば、婚姻届を提出していない男女の間で子どもを妊娠したものの、その後、父母の関係が解消され、父が子どもの認知に応じない場合があります。
このような場合には、次のような流れで対応を検討することになります。
1 父との話し合い
まずは、父との間で任意に認知をすることができないか話し合うことが考えられます。
子どもの出生前であれば、母の承諾のもとで父が胎児認知の届出をすることができます。出生後であれば、父が認知届を提出することによって認知することができます。
認知とあわせて、出生後の養育費などについて話し合い、合意内容を明確にしておくことも考えられます。
2 認知調停を申し立てる
父が任意の認知に応じない場合には、家庭裁判所への認知調停の申立てを検討します。
認知の訴えについては調停前置主義が採られているため、父が生存している場合には、原則として、いきなり認知の訴えを提起するのではなく、まず認知調停を申し立てます。
調停で父子関係について合意ができ、家庭裁判所がその合意を正当と認めた場合には、合意に相当する審判によって認知の効力が生じます。
3 認知の訴えを提起する
認知調停が不成立となった場合には、認知の訴えを提起することができます。
裁判では、父と子との間に生物学上の父子関係があるかどうかについて、当事者の主張や提出された証拠などをもとに判断されます。
なお、胎児について父が任意に認知することはできますが、調停による解決ができない場合の認知の訴えについては、子の出生後に提起することになります。
嫡出推定が及ぶ場合には注意が必要です
認知の手続を考える際には、その子について民法上の嫡出推定が及んでいるかを確認する必要があります。
例えば、母が婚姻中に出生した子や、離婚後一定期間内に出生した子については、民法上、母の夫または元夫が父と推定される場合があります。
このように法律上すでに父が定められている場合には、血縁上の父に認知を求める前に、嫡出否認などの手続によって、現在の法律上の父子関係を整理する必要があることがあります。
なお、令和6年4月1日以降に出生した子については嫡出推定制度が改正されていますので、出生時期や母の婚姻・離婚・再婚の時期によって手続が異なることがあります。
認知が事実に反する場合
認知がされたものの、認知をした者と子との間に実際には父子関係がないなど、認知が事実に反する場合には、認知の無効を求めることが問題となります。
現在の民法では、認知の無効の訴えを提起することができる者や期間が定められています。
- 子またはその法定代理人は、認知を知った時から原則として7年以内
- 認知をした者は、認知の時から7年以内
- 子の母は、認知を知った時から7年以内
また、子については、認知後の同居期間など一定の要件を満たす場合には、21歳に達するまで認知の無効の訴えを提起することができる場合があります。
認知無効については、誰が、いつ認知を知ったのか、認知後にどのような生活関係があったのかなどによって出訴期間が異なるため、具体的な事情を確認する必要があります。
認知と養育費
父との法律上の親子関係が認知によって成立すれば、父に対して養育費を請求することができます。
もっとも、認知が成立したからといって養育費の具体的な金額まで自動的に決まるわけではありません。養育費について父母間で話し合いがまとまらない場合には、別途、家庭裁判所に養育費請求の調停を申し立てることが考えられます。
父が認知に応じない場合には、認知の手続と、その後の養育費請求を見据えて対応を検討することが大切です。
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