刑事事件の公判手続は、どのような流れで行われるのでしょうか。
初めて刑事裁判を受ける方にとっては、法廷で何を聞かれるのか、どこに立つのか、何を話せばよいのか分からず、不安を感じることも多いと思います。
ここでは、主として事実関係に争いのない事件(自白事件)を前提として、刑事裁判の公判がどのような流れで進むのかを説明します。
刑事裁判の大まかな流れ
① 冒頭手続
人定質問、起訴状朗読、黙秘権の告知などが行われます。
② 証拠調べ
検察官の証拠、情状証人、被告人質問などが行われます。
③ 論告・弁論
検察官の論告・求刑、弁護人の弁論、被告人の最終陳述が行われます。
④ 判決
後日、判決期日が指定され、裁判官から判決が言い渡されます。
事実関係に争いのない比較的簡易な事件では、当職の経験上、起訴から判決言渡しまで1か月半~2か月程度となることがあります。もっとも、裁判所の期日の状況や事件の内容によって期間は異なります。
また、1回の公判については、冒頭手続から最終陳述まで1時間程度で終了する事件も多いと思います。
法廷に立つのが初めての方へ
「裁判所の法廷に立つことを考えるだけで緊張する」
「最近は不安で食事が喉を通らない」
刑事裁判を前にした依頼者の方から、このようなお話を聞くことがあります。
裁判所へ行くだけでも緊張するうえに、公判では被告人自身がお話をしなければならない場面があります。「何を聞かれるのだろう」「何を話せばよいのだろう」と不安になるのは自然なことだと思います。
これは被告人だけではありません。情状証人として出廷していただくご家族も同じです。初めて証言台に立つことに緊張される方は少なくありません。
事前に、どのような話をするのか確認します
当職が担当する場合には、公判前の打合せで、被告人質問や情状証人尋問においてどのようなことを尋ねる予定なのか、どのような内容を話してもらうのかを事前に確認します。
何も分からないまま法廷に行くのと、「このようなことについて聞かれる」と分かっている状態で法廷に行くのとでは、精神的な負担も違うと思います。
必要に応じてQ&A形式で整理します
場合によっては、打合せをした内容を簡単なQ&A形式にまとめた書面をお渡しし、自宅で確認していただくこともあります。
Q 事件を起こした原因について、どのように考えていますか?
→ 自分自身で考えている原因を整理しておく。
Q 今後、同じことを繰り返さないためにどうしますか?
→ 具体的な生活上の対策を整理しておく。
このように質問される内容をあらかじめ整理しておけば、法廷でも自分の考えを話しやすくなります。
ただし、答えを丸暗記する必要はありません
ここには一つ注意点があります。
Q&Aの書面に書いてある言葉を、一言一句そのまま覚えようとする必要はありません。
むしろ文章を丸暗記しようとすると、本番で一つ言葉を忘れただけで、その先が出てこなくなり、頭が真っ白になることがあります。
「この質問には、おおむねこのような話をするのだな」くらいの認識で十分だと考えています。
法廷で言葉に詰まっても、慌てる必要はありません
実際の法廷では、緊張して、打合せでは話せていたことが急に出てこなくなることもあります。
そのような場合でも、弁護人から質問の仕方を変えたり、話を思い出すきっかけになる質問をしたりしながら、供述を続けられるよう対応します。
法廷で完璧に話すことを目標にする必要はありません。事前に考えてきたことを、自分の言葉で一つずつ話してもらうことが大切だと考えています。
公判手続|冒頭手続
人定質問
最初に、裁判官から被告人に対して人定質問が行われます。これは、法廷にいる被告人が起訴された本人に間違いないかを確認するための手続です。
氏名、生年月日、住所などについて質問されます。
裁判官:あなたの氏名は?
被告人:○○○○です。
裁判官:生年月日は?
被告人:昭和○年○月○日です。
裁判官:住所は?
被告人:○○市○○です。
起訴状朗読
人定質問が終わると、検察官から起訴状の朗読が行われます。
どのような犯罪事実について起訴されているのかが読み上げられますので、被告人はその内容を聞くことになります。
黙秘権の告知
起訴状の朗読が終わると、裁判官から被告人に対して黙秘権などについて説明があります。
被告人には、終始沈黙することや、答えたくない質問について答えない権利があります。また、法廷で任意に話した内容は証拠となることについて説明されます。
起訴された事実についての意見
その後、裁判官から、検察官が読み上げた起訴状の内容について間違いがないかなどを尋ねられます。
事実関係に争いのない事件であれば、「起訴状に記載された事実に間違いはありません」などと答えることがあります。
裁判官:検察官から朗読された起訴状の内容に何か間違いはありますか?
被告人:起訴状の内容に間違いはありません。
裁判官:弁護人、ご意見は?
弁護人:被告人と同意見です。事実関係に争いはありません。
もちろん、否認事件であれば、起訴状のどの部分を争うのかについて意見を述べることになります。
公判手続|証拠調べ
冒頭手続が終了すると、証拠調べ手続に入ります。
検察官の冒頭陳述
冒頭陳述では、検察官が、これから証拠によってどのような事実を証明しようとしているのかを明らかにします。
具体的には、被告人の身上経歴、犯行に至る経緯、犯行状況などについて説明されます。
検察官からの証拠調べ請求
検察官から証拠調べの請求が行われ、それに対して弁護人が証拠についての意見を述べます。
事実関係に争いがない事件では、「同意します」「異議はありません」などの意見を述べることがあります。
その後、被害届、被害者や被告人の供述調書など、採用された証拠の内容が法廷で取り調べられます。
被告人側からの立証
情状証人
事実関係に争いのない事件では、被告人側から情状証人を請求することがあります。
情状証人には、被告人の親、配偶者、兄弟姉妹、親戚などがなることが多く、被告人が今後どのような生活をするのか、家族としてどのように指導・監督していくのかなどについて話してもらいます。
情状証人になっていただく方には、公判前に当職と打合せをし、どのようなことを質問するのかを確認します。
書証
被告人側から、弁号証として書面の証拠調べを請求することもあります。
例えば、被害弁償をしたことが分かる書面、示談書、被告人の反省文などです。
被告人質問
被告人質問では、被告人自身が、弁護人、検察官、裁判官からの質問に答えていきます。
事実関係に争いのない事件であれば、罪を犯してしまった原因、事件について現在どのように考えているか、被害者に対する気持ち、再び事件を起こさないために何をするのか、今後の生活予定などについて質問されることが多いと思います。
裁判官から厳しい質問を受けることもあります。自白事件であっても、裁判官は、どのような処分が被告人の更生や再犯防止につながるのかを考えながら質問をしています。
被告人としては、あらかじめ用意した文章を読み上げるというよりも、自分自身が現在どのように考えているのかを、自分の言葉で具体的に伝えることが大切だと考えています。
検察官の論告・求刑
証拠調べと被告人質問が終了すると、検察官から論告が行われます。
論告では、検察官が事実や法律の適用、被告人に対する刑についての意見を述べ、その最後に求刑が行われます。
裁判官は検察官の求刑に拘束されるわけではありません。最終的な刑は、法廷で取り調べられた証拠などをもとに裁判官が判断します。
弁護人の最終弁論
検察官の論告・求刑の後、弁護人から最終弁論を行います。
事実関係に争いのない事件であれば、事件の内容だけでなく、被害弁償や示談の状況、被告人の反省、家族による監督、仕事や生活環境などを踏まえ、今後の更生の可能性について意見を述べます。
被告人の最終陳述
弁護人の弁論が終わると、最後に被告人自身が意見を述べる機会があります。これを最終陳述といいます。
事実関係に争いのない事件では、事件についての反省や、今後同じことを繰り返さないという気持ちなどを述べることが多いと思います。
裁判官:最後に何か言っておきたいことはありますか。
被告人:今回の事件について反省しています。今後は二度と同じことをしないように生活していきたいと思います。
最終陳述についても、一言一句暗記する必要はないと考えています。自分が最後に裁判官へ伝えたいことを整理しておけばよいでしょう。
判決
事実関係に争いのない比較的簡易な事件では、初公判から1~2週間程度後に判決期日が指定されることがあります。ただし、事件や裁判所の状況によって異なります。
判決では、まず主文が言い渡され、その後に判決理由が説明されます。
2025年6月1日からは、従来の懲役と禁錮が廃止され、拘禁刑が導入されています。そのため、現在の事件では、犯罪の時期や適用される法律にもよりますが、「拘禁刑○年」などの主文が言い渡されることがあります。
判決の日も緊張するものです
被告人にとって、判決の言渡しは非常に緊張する瞬間です。
執行猶予が付く場合には、主文の中で刑を言い渡した後、続いてその刑の執行を猶予する旨が言い渡されます。
判決内容や今後必要となる手続については、判決後に弁護人から説明します。
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