遺産に関する紛争調整調停とは
遺産に関する紛争調整調停とは、相続人の間で、相続財産の有無、範囲、権利関係などについて争いがあり、当事者間の話し合いでは解決できない場合に、家庭裁判所で話し合いを行う手続です。
例えば、相続人の一人の名義になっている不動産について、他の相続人が「実際には亡くなった親の財産であり、相続財産に含まれる」と主張している場合などが考えられます。
また、親の預貯金について多額の引出しがあり、相続人の一人による財産の使い込みが疑われる場合にも、遺産の範囲や権利関係などに関する紛争について、この調停を利用して話し合うことが考えられます。
もっとも、使い込みに関する紛争では、預金が引き出された時期や請求の内容によって、遺産分割の問題として扱うのか、不当利得返還請求や損害賠償請求などの民事上の請求として扱うのかが異なります。
遺産に関する紛争調整調停が利用される場面
裁判所では、相続人の間で相続財産の有無、範囲、権利関係等について争いがあり、話し合いがまとまらない場合などに、この調停を利用できると案内しています。
例えば、次のような場合が考えられます。
- 相続人名義の不動産について、実際には被相続人の財産であったとして争いがある
- 被相続人名義の預貯金が相続開始前後に払い戻され、その取扱いについて相続人間で争いがある
- 相続財産に含まれるかどうかについて、相続人間で見解が分かれている
- 遺産分割を進める前提として、財産の権利関係を整理する必要がある
ただし、紛争の内容が相続人全員に及ぶ場合などには、遺産に関する紛争調整調停ではなく、遺産分割事件として申し立てることが適切な場合もあります。
遺産に関する紛争調整調停の流れ
申立先は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。当事者間で管轄する家庭裁判所について合意がある場合には、合意した家庭裁判所に申し立てることもできます。
申立てがされると調停期日が指定され、調停委員会が申立人と相手方から、それぞれ紛争が生じた経緯や財産の状況、双方の主張などを聴き取ります。
必要に応じて、預貯金の取引履歴、不動産関係資料、契約書、領収書などの資料を提出し、調停委員会が事情を確認しながら解決に向けた話し合いを進めます。
話し合いによって合意ができれば調停成立となります。合意に至らなければ、調停は不成立となります。
財産の使い込みが問題となる場合
親の財産の使い込みが疑われる場合には、まずいつ、誰が、いくら引き出し、何のために使用したのかを確認する必要があります。
特に重要なのが、使い込みと主張する行為が、親の生前に行われたものか、相続開始後に行われたものかという点です。
親の生前に預金が引き出された場合
親の生前に、相続人の一人が親の承諾を得ずに預金を引き出し、自分のために使用していた場合には、親がその相続人に対して有していた返還請求権などを他の相続人が相続したとして、不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求が問題となることがあります。
これに対して、預金を引き出した側からは、「親の介護費用や生活費に使用した」「親から使用を承諾されていた」「親から贈与を受けた」などの主張がされることがあります。
そのため、預金の取引履歴だけでなく、医療費、介護費、施設費、生活費などの支出状況や、親の判断能力、当時の親子関係などについても確認することになります。
親の死亡後に財産が処分された場合
相続開始後、遺産分割が終わる前に相続人の一人が相続財産を処分した場合には、民法上、一定の場合に、その処分された財産を遺産分割の対象として扱うことができる制度があります。
共同相続人全員の同意があれば、処分された財産が遺産分割時にも存在するものとみなして遺産分割の対象とすることができます。
また、共同相続人の一人または数人が財産を処分した場合には、その処分をした相続人本人の同意は必要ありません。
したがって、相続開始後の預金引出しについては、生前の使い込みとは異なる法律関係が問題となることがあります。
調停で確認する資料
遺産の範囲や使い込みについて話し合う場合には、客観的な資料をできる限り集めることが重要です。
例えば、次のような資料が考えられます。
- 預貯金通帳
- 金融機関の取引履歴
- 払戻請求書などの金融機関資料
- 不動産の登記事項証明書
- 固定資産税関係資料
- 医療費、介護費、施設費などの領収書
- 贈与や財産管理についての契約書、手紙、メモなど
特に預金の使い込みが問題となる事件では、多数の入出金について一つずつ使途を確認する必要があることもあり、資料の収集と整理が重要となります。
調停が不成立となった場合
遺産に関する紛争調整調停が不成立となった場合には、争いの内容に応じて民事訴訟などの手続を検討することになります。
例えば、ある不動産が被相続人の遺産であるかどうかを争う場合や、親の生前に無断で引き出された預金について返還を求める場合などには、裁判所に訴えを提起して判断を求めることがあります。
遺産に関する紛争調整調停は、あくまで当事者間の話し合いによる解決を目指す手続です。遺産分割調停とは異なり、合意できなかったからといって、争われている権利関係について当然に家庭裁判所が審判で判断するものではありません。
使い込み事件では資料の整理が重要です
親の財産の使い込みをめぐる紛争では、兄弟姉妹間の感情的な対立が強くなることがあります。
「自分は長年親を介護してきた」「親の面倒を見ていなかったのに相続のときだけ金銭を要求している」といった主張と、「親の財産を勝手に使ったのではないか」という主張が対立することも少なくありません。
しかし、法的な解決のためには、過去の家族関係だけでなく、預金がいつ引き出されたのか、その金銭を誰が受け取り、どのような目的で使用したのかを客観的な資料から確認していくことが重要です。
調停を利用するのが適切なのか、訴訟による請求を検討すべきなのかについても、引出しの時期や金額、相続財産の状況、相手方の主張などを整理したうえで判断する必要があります。
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