少年鑑別所での面会【審判直前編】|模擬審判で少年の不安を和らげる付添人活動

少年鑑別所での面会では、審判の直前に、少年の考えや気持ちをどのように整理し、家庭裁判所で伝えられるようにするかも大切だと考えています。

私は、少年審判の直前、通常は審判の2~3日前に、できるだけ面会に行くようにしています。

この時期になると、少年は審判を目前に控え、強い緊張感を抱えています。

他方で、面会を重ね、鑑別所での生活を送り、家族との面会や手紙のやり取りを経る中で、少年の考え方には大きな変化が見られることも少なくありません。

審判直前の面会では、その変化を整理し、少年が自分の言葉で家庭裁判所に伝えられるように支えることが、付添人として重要な役割の一つだと考えています。

目次

1 審判直前の少年に見られる変化

審判の直前になると、多くの少年に共通する変化が見られます。

もちろん、非行の内容や性格によって違いはありますが、最初の頃には他人の責任ばかりを語っていた少年でも、少しずつ、自分が悪かった点を理解するようになっていることがあります。

面会当初

相手が悪い、周囲が悪いという他責的な考えが中心。

処分への不安が強く、自分の将来のことばかり気にしていることもあります。

審判直前

自分が悪かった点を理解し、規律ある生活を送りたいという気持ちが強くなっています。

更生に向けた思いが高まり、今後の生活について真剣に考えるようになります。

例えば、審判直前の少年からは、次のような気持ちが語られることがあります。

審判直前によく見られる少年の気持ち

  • 家族が面会に来てくれたことで、家族への感謝の気持ちを持つようになった
  • 嫌だと思っていた学校や仕事も、当たり前の日常が幸せだったと気づくようになった
  • 鑑別所では空き時間に読書しかできなかったが、そこで本の面白さや大切さに気づいた
  • 自分の生活の乱れや考え方の甘さに気づき、もう同じことを繰り返したくないと考えるようになった

この時期の少年は、たくさんの変化を感じ、更生に向けた気持ちを強く持っていることが多いように思います。

2 それでも、少年は「うまく話せるか」が不安です

もっとも、少年が考えを深め、更生の気持ちを強く持つようになったとしても、それだけで安心できるわけではありません。

審判直前の少年からは、しばしば、

「裁判官に、うまく話せるか不安です」

「頭の中では考えているけれど、言葉にできるか分かりません」

「緊張して、何も言えなくなるかもしれません」

という不安が見られます。

私は、その不安はとても自然なものだと思っています。

実際、少年審判という特別な場面で、裁判官や調査官を前にして、自分の考えを落ち着いて話すことは、大人でも簡単ではありません。

だからこそ、審判直前の面会では、「考えていることを、きちんと言葉にできるようにすること」が重要になります。

3 私が必ず行う「模擬審判」

そのため、私は、審判直前の面会では、模擬審判を必ず行うようにしています。

もちろん、これは強制ではありません。

少年に対して、

「審判の練習をしてみますか?」

と声をかける形にしています。

すると、私の経験では、ほとんどの少年が「やってほしい」と言ってくれます。

もっとも、ここで大切なのは、裁判官の前でよく見せるための練習をすることではありません。

模擬審判の目的は、少年自身の考えを整理し、自分の言葉で話せるようにすることにあります。

模擬審判で確認すること

  • 事件について、どのように考えているか
  • 自分が悪かった点をどのように理解しているか
  • 被害者や家族について、どのように考えているか
  • 今後、同じことを繰り返さないために何をするのか
  • 学校や仕事、家庭でどのように生活していくのか

頭の中で考えていることを、実際に「質問されて答える」という形にしてみることで、自分でも整理しやすくなります。

4 裁判官役として、考えの浅いところを掘り下げる

模擬審判では、私が裁判官役になって質問をします。

そして、少年の答えの中で、考えがまだ浅いと思われるところについては、さらに掘り下げて質問をします。

例えば、少年が、

「悪いことをする友人とは遊ばないようにします」

と話したときには、それで終わりにはしません。

例えば、次のように質問を重ねます。

  • その友人が、突然、家に来たらどうしますか。
  • 連絡が来たら、どのように断りますか。
  • 断れずに流されそうになったとき、誰に相談しますか。
  • また同じ場面になったとき、自分は本当に断れると思いますか。

このように質問するのは、少年を困らせるためではありません。

考えがまだ不十分なところに気づいてもらい、審判までにもう一度しっかり考えてもらうことが狙いです。

模擬審判を通して、少年自身が「そこまで考えていなかった」と気づくことも少なくありません。

5 話し方や落ち着きのない動作にも助言する

また、模擬審判をすると、内容面だけでなく、話し方や態度についても気づくことがあります。

頭の中では整理できていても、面談形式の場面になった途端に、

  • 身体を揺さぶる
  • 手をバタバタ動かす
  • 視線が落ち着かない

といった、落ち着きのない様子が出る少年は少なくありません。

もっとも、その多くは意識してしているわけではなく、無意識の緊張の表れだと思います。

模擬審判で助言すること

  • 質問は最後まで聞いてから答える
  • 急いで立派なことを言おうとしなくてよい
  • 落ち着いて、自分の言葉で話す
  • 無意識に身体を揺らしたり手を動かしたりしていないか気をつける
  • 分からないことは、分からないと正直に答えてよい

実際に練習してみることで、少年自身も、自分の癖や緊張の出方に気づくことがあります。

6 模擬審判には、不安を和らげる効果もあります

模擬審判の大きな意味の一つは、少年の不安を和らげることにもあります。

「どのようなことを聞かれるのか分からない」「うまく言えないかもしれない」という状態では、不安ばかりが大きくなってしまいます。

しかし、一度でも模擬的にやってみると、少年の中で、

  • こんなことを聞かれるのか
  • 自分はここがまだ弱いのか
  • もう少し考えておいた方がよい部分はここか
  • 何も準備しないより、かなり安心できた

という整理ができます。

その結果、少年は、自分の考えの不十分な点にも気づき、最後の審判に向けて、より落ち着いた気持ちで準備を進めることができます。

模擬審判は、少年に「良い格好をさせるため」のものではなく、考えを整理し、不足している点に気づき、不安を和らげたうえで審判に臨んでもらうための大切な機会だと考えています。

7 審判直前の面会で大切にしていること

審判直前の少年は、多くの場合、これまでの面会や鑑別所での生活の中で、大きく考え方を変化させています。

家族への感謝、当たり前の日常の大切さ、自分の未熟さ、今後の生活への決意――そのような思いを抱えながらも、うまく言葉にできず、不安を感じていることが少なくありません。

だからこそ、私は、審判直前には面会に行き、模擬審判を通じて、少年が自分の考えを整理し、落ち着いて本番に臨めるように支えたいと考えています。

少年事件では、単に意見書や資料を提出するだけでなく、少年本人が家庭裁判所でどのように自分の考えを伝えるかも重要です。

審判直前の面会は、そのための最終確認の場であり、付添人として特に大切にしている時間の一つです。

法律相談のご予約・お問い合わせ

法律相談をご希望の方は、ご都合のよい方法でお問い合わせください。

平日 9:00~17:00

24時間送信できます

24時間送信できます


片岸法律事務所
〒546-0043 大阪市東住吉区駒川3丁目12番5号
弁護士 片岸寿文(大阪弁護士会)
電話:06-6628-6202

目次