親の預金を引き出して兄(弟)夫婦が使い込み?

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相続財産の使い込み問題

最近、地方裁判所では、親の財産を子どもの1人が勝手に使い込んだために、兄弟姉妹間で紛争が勃発するという事件が多くみられるようなっています。

よくホームページ等で見かける、「遺産の使い込み」と称する事件です。

私のホームページでも、遺産の使い込みの解説をしたページのアクセスが多くなってきているので、コラムとして書いてみることにしました。

法律上は親であっても別財産

親夫婦と同居している子であって、生計を同一にしている場合、次第に親の財産と自分の財産との管理が混同していく可能性があります。しかし、当然ではありますが、法律的に考えれば、親子でも財産の所有については、それぞれ独立しております。したがって、子どもが親の財産を勝手に使い込みすることは許されません。

親の財産の使い込みの紛争が生じるケースは?

実家に残った子と実家から出ていき、都心部で世帯を設けた子との間で紛争が生じることが多いのではないでしょうか。親としては、どうしても近くにいて世話をしてくれる子に対し、恩恵を与えたいと思うようになるでしょう。

そうすると、預金の一部を贈与したりする旨の発言も自然と出てくるのではないでしょうか。

そのような、発言を起因として、次第に、親子間に金銭についての馴れ合いが生じ、親が認知症となったときに、親の意思表示なく、預金の引き出しなどを行うというような事例が想定されます。

親の預金を引き出した子だけが一方的に悪いのか?

では、預金を引き出した子が一方的に悪いといえるのかというと難しい問題であるといえます。

贈与の可能性

実家に残った子は、当然、親の介護をすることになります。高齢者の親の介護は大変です。

病院への送り迎え、デイサービスの手配、介護施設スタッフとの連絡行為など、日常の仕事と並行して行わなければなりません。

そのような介護援助の対価として、親が子どもに対して贈与等をすることも十分に考えられます。

また引き出しされたお金の全部が全て費消されたとも言い切れません。親のために使用した可能性もあるでしょう。

紛争の背景には介護問題との絡み

介護問題が絡んでくると、話し合いで解決する筈であった遺産相続の問題も解決しないようになる可能性があります。

たとえば、親元にいる子の1人だけが、親の介護をしている場合、「なぜ自分ばかり、親の介護をしなければいけないんだ!」と他の兄弟に対して不信感を持つようになってくると思います。そうすると、財産の使い込みを指摘されたとしても、心情的には簡単に認めるわけにはいきません。

法律的には問題があるとは分かりつつも、「親が生きているときには何もしなかったのに、亡くなった途端にノコノコと遺産をもらうためだけに顔を出しやがって」という気持ちが生じるのも分からないではありません。

兄弟姉妹だけの問題でないケースも

また、遺産の使い込みの事件では、純粋な兄弟姉妹間の争いというのも少ないのではないかと思います。例えば、兄と弟の事件のように見えても、実際は、兄嫁と弟との人間関係の悪さから生じた事件だったりもするのではないでしょうか。

紛争の解決のためには?

そのように考えると、親の財産の使い込みの事件は、非常に難しい問題が背後に控えていると思います。原告、被告の両者に一定の言い分があると思われるため、判決で終局的に解決するのは難しいでしょう。判決が出たとしても控訴の可能性があり、紛争が長期化します。そうすると紛争解決のためには、互い一歩ずつ譲り合って和解に持ちこむのが一番ではないでしょうか。

最後まで、お読みくださってありがとうございます。親の財産の使い込みの問題でお悩みの場合、ご相談をお聞きします。お気軽に当事務所までお問い合わせください。